わたしのキャラメル王子様









2限か3限終わりの休み時間だったと思う。悠君が血相変えてうちのクラスにやってきた。



「沙羅っ、大変!」



猛ダッシュのあまり息を切らしているうえに、あり得ないほどの真顔だったから、すごくビックリしたんだ。



「悠君、どうし……うわっ!」



突進してきた悠君に、すごい勢いで手を掴まれてしまった。



「あっ、ごめん。勢いで触っちゃった!」



「いや今そんなことどうでもいい!
てか、どうしたの?なんかあったの?」



「それが……ハァハァハァ」



「なに?なになになに!!」



なんかおそろしく不安を煽られちゃって。



「こっ、これ……」



「これ?」



手に持っていたものを、ぐいと突きつけられた。
それは、見たまんまを言えば……。



「……食べかけの、パンだね」



「何言ってんの!購買で新発売のチョココロネだよ!」



「えっ、あ、そうなんだ」



まぁ、確かに渦巻き状の形態は確認できた。



「あまりにも美味しくて」



「へ?」



「沙羅に食べさせてあげなくちゃって!」



「チョココロネを?」



「そう!だからはい」



お届けできた達成感たっぷりなせいか、ものすごいキラキラ笑顔で渡されてしまった。



「食べかけじゃん!」



「大丈夫!俺虫歯ない!」



「じゃなくて!」



「間接キスがいや?なら早くすませちゃおうよ?」



「ちがーう!」



「マジやばいんだって、うまいって!」



「これチョココロネなんだよね?
どこにもチョコが見当たらないよ?」



袋のなかにあるのは、スクリュー状の先っぽの部分のみ。そうつまり、クリームが届かないあの部分のみ!



「しくったー!」



頭を抱えるほどかと私はうんざりして。



「一口がでかすぎた……」



「一口かい!」



いやいや、後悔するほどのことじゃないし!と突っ込んだりもして。



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