わたしのキャラメル王子様
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店内は……ほんとに昼間と全然違った。
一度通りがかったことがある店で、ガラス越しに知ってる程度だったけど、それでもまったく違う場所に紛れ込んでしまったみたいだった。
昼間の明るいライトが落ち着いた間接照明に切り替わるだけで、こんなにイメージ変わるもんかな?
いやいや、内装もちょっと昼と違う気がする。
嗅いだことのない香水の匂いに心を奪われ、
グラスが触れあう微かな音のなかに身を委ねた。
お酒とコーヒーの気配。
大きな花器のなかにこぼれるほおずきのオレンジ。
カウンターには微かな話し声と交錯する大人の男女の視線、それからテーブルにはリラックスした談笑があった。
天井にはシーリングファンが気だるげにゆっくり回ってて、それにシンクロするみたいに雰囲気のあるピアノ曲が流れてる。
「あのっ、素敵すぎてさ……ちょっと気後れしてるんだけど。ば、場違いじゃない、うちら?」
京ちゃんと私は店の魅力に圧倒されて、途端にへっぴり腰になった。
「そう?気負うことなんか何もないよ。カフェメニューも充実してるし、オリジナルのノンアルカクテルなんかもオシャレだし、現実逃避にはもってこいじゃない?高校生の君達にはちょっと悪いことしてる雰囲気も味わえてよくない?」
雅ちゃんにそう言われて納得した。
確かにここに来てぽーっとしちゃって、悩んでいたことさえ忘れてしまってたな。