わたしのキャラメル王子様
でも席につくと、雅ちゃんは落胆した声をあげた。



「あれ、もうはけちゃうのかな?」



2曲ほど弾き終えると彼のそばには、次のピアノ王子がやって来て、自然な所作で二人は交代した。



雅ちゃんの話によると普段は1人が結構長めに弾いてくれるらしい。



彼らは店のBGMとしてあそこにいるらしく、お客さんとの絡みもほとんどないんだって。



そういう大人のルールもあって、ガツガツいけないわけか。



でも、眼鏡王子が席を立ってバックヤードの方へ行こうとするのを、誰かが止めているみたいだった。



「なにあのオンナ」



京ちゃんの歯に衣きせぬ突っ込みに笑ってしまった。



「あー、あの子は仕方ないよ。関係者だもん。ちなみに内装も家具も彼女がすべて任されてるらしいよ。センスがいいしどれも可愛いから誰も文句言えないのよね、ほんと嫌なタイプ~!女子の敵!」



「……なるほど。それで王子と絡んでも不自然じゃないのか」



思わずつぶやいてしまった。



ん。あれ。でも。



あのまっすぐな長い黒髪も
華奢な後ろ姿も、どこかでみかけたことがある。
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