わたしのキャラメル王子様
「掴み所がなくて振り回される感じだ?」



「まさにそれ。もう10年くらいそんな感じかも」



黒髪で眼鏡かけるだけで
あんなに大人っぽく見えるなんて知らなかった。



口笛は吹けないくせに
ピアノは弾けるなんて知らなかった。



年齢を偽ってまで夜にバイトしなきゃいけない理由も、咲田さんにごめんなさいできない理由も。



私は悠君のこと、ほんとは何にも知らないんだ。



「でも、そんな付き合いの長い沙羅ちゃんに内緒にしてるなんて、何か理由があるんじゃない?ただの幼なじみだったら特に秘密にしないと思うな。バイトもキープも、あからさまに話すんじゃない?むしろ自慢するかも」



「……そうかな」



雅ちゃんにさとされて、あのとき自分はなんて酷いことを言ってしまったんだろうってうなだれてしまった。



変装して、そのうえ年齢まで偽って夜遅くまで働くのには、やっぱり何か理由があるのかも。



もしかしてものすごく、お金に困ってたりして。悠君のパパの会社、とっくに倒産してたりして。
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