わたしのキャラメル王子様
そんなのどうでもいいとすごんだわりに、我に返った悠君は、あわてて私を電車の中に引きずり込んだ。



夜遊びとか外泊なんてもってのほか!
そんなことがバレたらママが悠君を出禁にしちゃうらしい。二人はいったいどんな契約を結んでるんだろう。



乗客がまばらなせいか、やけに冷房の効いている車内に、私達は微妙な間隔で座った。さっきのはたぶん間違いなく現実だって思ったら、急に気恥ずかしくなって何を話していいかわからなくなった。



「このスキマ。なに?」



シートに座るなり、悠君は不自然にあいた鞄いっこ分のほんのちいさなスペースにクレームをつけた。



「隙間は隙間でしょ」



恥ずかしくて、とてもじゃないけど悠君の顔を見ることができない。



「待てよ?もしかしてこれが付き合いはじめたばかりの初々しいふたりの距離感てやつ?」



「大袈裟だよっ」



悠君の言葉が照れくさくて、うつむいてしまう。
ほんとに私って可愛げない。



「ほんとはくっついて、手とか握ってみたいのに……イチャイチャしたいのに!うかつに踏み込めないのはなんでなんだ!」



「いちいち心境を実況しなくていいからっ!」



すかさず小声で言い返して、そう思うならもうベッドには潜り込まないでねと釘を指しておいた。



「それ本気でいってる?さっきは俺に会いたくて泣いてたのに。寂しくて恋しくて好きすぎて泣いてたくせにさぁ」



「……それ盛りすぎだからね」



反撃したら悠君はつまらなそうな顔で、長い足を組み換えた。



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