ア ヤ メ。
「じゃあ、こうしよう」
僕の言葉に耳を傾ける目の前の人間。
その瞳も髪も真っ黒で、少し不気味な程だ。
利用価値は髪の毛一本程も無かった。
「僕は時々、衝動的に殺意が芽生える事がある。」
「その時に私を呼んで、殺す」
「そうだ。」
理解力はある。
最低限の教養は整っているか。
「あー、ケータイとか持ってる?」
「連絡手段は、一つも。」
「えぇ、弱ったなあ。僕理性失っちゃって、誰でも良くなるんだよね。」
この発言は男の過去から来ていた。
衝動的に殺意が芽生え、親を刺し殺してしまったのだ。
理性を失うと人を選ばなくなる。
男はそれを自覚していた。
今じゃ小学生すら防犯目的でスマートフォンを持っている時代だ。
見た所中学生くらいだろうか。
援助交際で察していたが、お金が無いんだろう。
「じゃあ、貴方に付いて行く」
「………………それは僕と行動を共にするってこと?」
こくんと頷く目の前の人間。
危機感がまるで無い。
というよりは、自分を大切にしていない。
そういえば死にたいのだったか。
「いいよ、付いてきて。」
そうだ、死にたいなら危険な状況になっても助ける必要は無いし、何時でも切り離せる存在だ。
そう、こいつは非常食。
「あれ?………一緒に住むってこと?」
先程と同じように頷く。
ああ、これは誤算だった。