シンデレラは脅迫されて靴を履く
灰かぶり姫、王子に見つかる。
「九条 深桜。本日付で俺の秘書」
「………。」
世界にホテル・リゾート事業を展開する東宮グループ本社。
総務部 秘書課 秘書室の朝は慌ただしい。
私、九条 深桜も例外ではない。
「浅野くん、天草常務のここの予定なんだけど…」
「おい。九条」
「うちの専務がこの時間常務に空けておいてほしいって言うのよ。調整お願いできる?」
「おい。九条。聞いているのか?」
「……あの、九条先輩…」
「ん?ああ、何か気になることでもあった?
なんでも言ってちょうだい?」
「いや、あの…」
「おい!深桜!!
俺を無視するとはいい度胸だな!」
室内が凍りつく。
「はぁ~…」
大袈裟に溜め息をついて後ろを振り返る。
「…副社長。何か御用でしょうか?
朝の秘書室は忙しいのですが。お話は今でなければいけませんか?」
鬼の形相で冷たい空気を纏い、私の後ろに立つのは
東宮グループ本社取締役副社長
東宮 雅爾
不本意ながら幼なじみの一人。
勿論、総務部秘書課以外には箝口令がしかれている。
色々と面倒な理由があるのだ。
「お前は今日から俺の秘書だ。早くこっちに来い」
「…私は天海専務の秘書です。掛け持ちは難しいかと」
雅爾さんが私の顔の前に紙を掲げる。
「辞令だ。荷物を纏めたら来い」
そう言って秘書室を出ていく。
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