シンデレラは脅迫されて靴を履く
「ハハ、だろうな。
驚いただろうが、決定事項だ。
いつまでもお前を灰かぶり姫のような扱いはできないんだよ。
わかるな?
深桜はシンデレラになる予定なんだから」
灰かぶり姫…
ギリギリと手を握りしめる。
私は灰をかぶっているままで充分幸せなのに。
「私はシンデレラにもならないし、あの世界にも帰るつもりはありません!
陽瑠(はる)さんに言いつけてやりますから!」
鷹尋さんをキッと睨み付けるように声をあげる。
「おっと、陽瑠を味方につけるのだけはやめてくれ。
陽瑠のお願いには弱いんだ」
両手をあげて降参するポーズをとる鷹尋さん。
「九条君、それはやめていただきたい」
げんなり、うんざりした顔で頭を横にふる室長。
鷹尋さんの奥様は秘書課に勤めていた。
あの時の騒動はいまでも忘れられない。
まぁ、そのお話はまたどこかで…
「雅爾のこと、よろしく」
「私は秘書ですので、副社長がしっかりとお務めを果たせるように力を尽くします。それでは、失礼致します」
バタン!!
社長室を出ようとしたとき、大きな音を立ててドアが開いた。