シンデレラは脅迫されて靴を履く
「九条君?」
「し、室長…申し訳ございません…」
ブランケットから顔だけだし項垂れる。
「いえ、社長と私が止められていればこんなことにはならなかった…こちらこそ申し訳ない」
「おい、こら。佐伯!それ以上近づくなよ?!」
鬼の形相で室長の肩を掴む雅爾さん。
「副社長。私は大切な部下を貴方に差し出したことを少々後悔しております。このことは如月にも報告しますので」
「待て!」
私の頭をひと撫でして部屋を出ていこうとした室長をイラつきを露にした雅爾さんが引き留める。
「何故、東宮家の問題を如月にまで報告する必要がある」
「九条君は彼女の秘蔵っ子です。このままでは被害は私にも及びますので。では、失礼致します」
「クソ!恐妻家が!!」
如月さん…まさか、そうだったのか…
旦那様のお話がでないと思ったら…
まさか室長とは…
気づかなかった。
夫婦別姓オッケーの会社恐ろしい…
「深桜、これに着替えろ。さすがに下にいってロッカーを開けるのはまずいと思ったからな。
陽瑠さんに連絡して持ってきてもらった」
これ…
トートバッグに入っていたのは、スーツのインナーとストッキング。そして下着。全て私の私物だ。
「陽瑠さんは…」
「佐伯が来たということは、今は社長室だろう。
全く…何故、陽瑠さんがお前の隠れ家を知っている。
合鍵まで持ってやがるし」
「………」
「俺は探しだすのに三年かかったというのに。
まさか灯台もと暗し、俺と同じマンションに隠れていたとはな。深桜…今夜は逃がさないからな」
雅爾さんの冷たい空気に当てられ動けなくなる。
背筋が凍る。