シンデレラは脅迫されて靴を履く
「ふ、副社長?」
後ろから抱き締められていた。
「俺の好きな豆…覚えていたんだな」
「社長にお聞きしました。
コーヒー入りましたので、お部屋でお待ち下さい」
とりあえず、離れてくれ。この腹黒俺様男。
コトン
「どうぞ」
「ああ、ありがとう」
雅爾さんはコーヒーを飲み、デスクにつく。
あ、仕事モードだ。
「本日のご予定ですが…」
手帳を確認しながら口を開くと制止の手が掲げられる。
「17時以降の予定だが、会食はキャンセルしてくれ」
「はい?」
思わず顔を上げると真剣な顔でデスクに頬杖をついている雅爾さん。
「社員の勤務時間は9時から18時だろう」
「え、ええ。そうですが」
「ならば君も18時で退勤、退社だ」
「は?ですが、秘書課は特例です。重役秘書は接待費や夜勤費が支給されています」
「知っている。だが、今日は18時で帰らなければいけない用事がある。
俺も、君もね」
仕事モードの口調を崩さずに謎めいたことを言う。