16の、ハネ。
物心がついたときには、私は既に右手にラケットを握り、左手にはシャトルを握っていた。
父はバドミントンの元実業団選手。
母はピアノ教室の先生。
兄弟は誰もいなくて、両親は私のことを付きっきりで見守っていた。
その一貫として、バドミントンをやらさせた。父はそう言っていた。
*
「ねえ、パパ。あたし、疲れちゃったから休んでもいい?」
あたしはパパとの練習が嫌い。
お友達は誰も体育館の中にはいないし、パパと二人きりだから、パパはずっとあたしのことを見てる。
それに、1人だけでずっと練習しているとすごく疲れる。
「すぐに甘えない。まだやるんだ」
「でも、もう100球ノック5セットもやったよぉー」
「大丈夫、音羽ならまだ出来るから。な?」
やっぱり、あたしは、パパとの練習が嫌いだ。
だけど、それでも頑張ってこれたのは、「音羽なら出来る」ってパパが褒めてくれるから。
あたしのことを、認めてもらってる気がするんだ。
「じゃあ、あたし、頑張るよ!」
辛くても、苦しくても、あたしはパパの言葉があれば無敵だった。