16の、ハネ。
さて、佐藤ちゃんはどこに行ったのかな。そうやって嘘の約束相手の姿をキョロキョロ探してると、ふいに左肩をトントンと叩かれた。
誰だ!? と思って左を振り向いたが誰もいない。
おかしいな、と思っていたそのとき。
「んで、さっき一緒にいた人とはどんな関係なの?」
「うわぁぁぁぁっ!!」
いきなり声をかけられて、心臓が止まりそうになった。……くらい驚いた。
しかし当の本人は、私の右隣に何事もなかったかのように並んで歩いているのだ。
……さっきのトントンは佐藤ちゃんの仕業か。あえて左肩を叩き、自分は右側で立つという策略。
なんだか、今日は脅かされることが多い。今朝の占いでは、とくにそんなこと言われていなかったけれど。順位も3位という、割と上位な結果だったし。
そんなことを呑気に考えていたのだが。
『んで、さっき一緒にいた人とはどんな関係なの?』
そこでやっと、佐藤ちゃんがとんでもない質問をしてきたことに気づいた。
「え、ちょっと待って!? 見てたのっ!?」
「いやいや、返答の時差ありすぎだろ」
と佐藤ちゃんが突っ込む。うん。たしかに遅いけど。
この佐藤ちゃん。
女子にしては珍しく、いつも一人。
普通、女子ってある程度仲良い人たちと固まって行動するものだけど、佐藤ちゃんはなんていうか、オールマイティ。
つまり、どこのグループにも属さず、一人ぷらぷらとしてる子。
でも別に、常に一人でいるというわけでははなく、誰とでも仲が良くて、色んなグループの間を行き来してるのだ。だから、良い意味でグループに属さない。そして、「一人」だけど「独り」じゃない。
この子も、陽人並に変わっていると思う。
……って、そんなことは今はどうでもいいんだ。
陽人と一緒にいたことが既にばれていたのは、誤算だった。
「確かあの子、男バドの子でしょ? ……片足が義足の子」
「なんで知ってるの!?」
私が反射的に聞くと、逆に佐藤ちゃんの方が少し驚いた顔をした。
「多分、知らない人の方が珍しいよ?」