16の、ハネ。

なんだか、いつもよりテンションが上がっている。
やはり、遠足を楽しみにしていた小学生と同レベルなのだろうか。

まあ、それでもいい。



今日は、大会だ。






会場に着くと、意外にも多くの人が集まっていた。
中には、サークル全体で揃えたウィンドブレーカーを着ながらアップトレーニングをしている人たちもいる。


さて、陽人たちはどこだろうか。


とりあえず、体育館入り口の方まで行くことにしようとすると……。

「おーい!!」
「音羽ねーちゃーん!!」

大声で名前を呼ばれて、恥ずかしくなったが、声の主は明らかにサークルのちびっこたちだったので無視するわけにもいかない。

声のした方を振り返ると、案の定ちびっこたちがいた。

「みんな、おはよー!」

私も精一杯、大きな声で返すと、ちびっこたちは大きく手を振ってくれた。

その後ろには、陽人もいる。

「みんなで何してんのー?」

と私が聞くと、ちびっこたちが声を揃えて「ランニングー!」と答えた。

陽人もニヤリと笑って、「音羽も俺たちと走ろーぜー!」などと、提案する。

「私服でコートも着てて、走れるわけないでしょ!?」

私は至極真面目に正論を叩きつけたが、陽人は「なにバカなこと言ってんだよ」と笑いながら答えた。

「んなもん、気合いでなんとかなるって!」

「はぁ!?」

あんたらは、動きやすい格好だからいいけど、こっちジーパンですよ?

反論するのも面倒なので、そのまま無視して戻ろうとすると、サークル最年少の女の子ーー美香ちゃんが私に抱きついてきた。

「音羽ちゃんは、みぃたちと一緒に走りたくないの……?」

美香ちゃんはじいっと私を見つめる。

……そんなウルウルした目で訴えられたら、断れないじゃないかっ!

こればかりは不可抗力である。

「んー、じゃあ、ちょっとだけなら」

私がそう答えるのと同時に、陽人がいつのまにか、私の腕を掴んで引っ張っていた。

「よし! みんな、全速力だぁっ!!」

「おーーー!!!」

「ちょ、待っ……!」

制止をかけるが、みんな御構い無し。

「おぉ、ねーちゃんも走んのか。若いんだから頑張れよ」

などと、呑気に話しかけてくるのはサークル代表の例のおじさん。

「〜〜っ!」

意外と負けず嫌いな私は、陽人たちの背中をダッシュで追いかけた。

「うわ、音羽怪獣がやってきたぞ! みんな逃げろ逃げろぉー!」

「誰が、怪獣、だってー!?」

私は息が上がりながらも、さらにスピードを上げる。

コートが邪魔なので、その場で脱ぎ捨てて、おじさんに手渡した。

ジーパンも下がってくるが、気にしない。

みんなが笑いながら、顔を真っ赤にして走る。


冬の空の下。
白い息は、思いのほか澄んでいた。



< 73 / 101 >

この作品をシェア

pagetop