16の、ハネ。
なんだか、いつもよりテンションが上がっている。
やはり、遠足を楽しみにしていた小学生と同レベルなのだろうか。
まあ、それでもいい。
今日は、大会だ。
*
会場に着くと、意外にも多くの人が集まっていた。
中には、サークル全体で揃えたウィンドブレーカーを着ながらアップトレーニングをしている人たちもいる。
さて、陽人たちはどこだろうか。
とりあえず、体育館入り口の方まで行くことにしようとすると……。
「おーい!!」
「音羽ねーちゃーん!!」
大声で名前を呼ばれて、恥ずかしくなったが、声の主は明らかにサークルのちびっこたちだったので無視するわけにもいかない。
声のした方を振り返ると、案の定ちびっこたちがいた。
「みんな、おはよー!」
私も精一杯、大きな声で返すと、ちびっこたちは大きく手を振ってくれた。
その後ろには、陽人もいる。
「みんなで何してんのー?」
と私が聞くと、ちびっこたちが声を揃えて「ランニングー!」と答えた。
陽人もニヤリと笑って、「音羽も俺たちと走ろーぜー!」などと、提案する。
「私服でコートも着てて、走れるわけないでしょ!?」
私は至極真面目に正論を叩きつけたが、陽人は「なにバカなこと言ってんだよ」と笑いながら答えた。
「んなもん、気合いでなんとかなるって!」
「はぁ!?」
あんたらは、動きやすい格好だからいいけど、こっちジーパンですよ?
反論するのも面倒なので、そのまま無視して戻ろうとすると、サークル最年少の女の子ーー美香ちゃんが私に抱きついてきた。
「音羽ちゃんは、みぃたちと一緒に走りたくないの……?」
美香ちゃんはじいっと私を見つめる。
……そんなウルウルした目で訴えられたら、断れないじゃないかっ!
こればかりは不可抗力である。
「んー、じゃあ、ちょっとだけなら」
私がそう答えるのと同時に、陽人がいつのまにか、私の腕を掴んで引っ張っていた。
「よし! みんな、全速力だぁっ!!」
「おーーー!!!」
「ちょ、待っ……!」
制止をかけるが、みんな御構い無し。
「おぉ、ねーちゃんも走んのか。若いんだから頑張れよ」
などと、呑気に話しかけてくるのはサークル代表の例のおじさん。
「〜〜っ!」
意外と負けず嫌いな私は、陽人たちの背中をダッシュで追いかけた。
「うわ、音羽怪獣がやってきたぞ! みんな逃げろ逃げろぉー!」
「誰が、怪獣、だってー!?」
私は息が上がりながらも、さらにスピードを上げる。
コートが邪魔なので、その場で脱ぎ捨てて、おじさんに手渡した。
ジーパンも下がってくるが、気にしない。
みんなが笑いながら、顔を真っ赤にして走る。
冬の空の下。
白い息は、思いのほか澄んでいた。