16の、ハネ。
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私は汗だくになりながら体育館に入って、サークルのみんなの場所取りのお手伝いをした。
毎週来てるはずの体育館は、今日はどことなくよそよそしくて、大会ならではの雰囲気を醸し出している。
フロアの入り口は締め切りにされ、受付の机が並べられていた。
そこでちょうど、サークル代表のおじさんがエントリー確認をしている。
ちなみに、陽人たちはシューズを履いたり、ストレッチをしたりなどフロアに入る準備をしていた。
どうやら、開会式前に少しだけ練習時間が取れるらしい。
さっきまでのお遊びモードはどこにもなく、みんな真剣な眼差しだった。
オープン戦とはいえ、数少ないパラバドの大会なので、貴重な機会なのだろう。
「よっしゃ、あと五分したら練習開始だから下でスタンバるぞ」
子供たちの中では最年長の陽人が、ちびっこたちに声をかけた。
……が、みんな緊張してるのか返事の声にハリがない。
ここは、応援にきた私が何とかしなくては!
「み、みんな! 私、声小さいけど、頑張って応援するから、みんなも頑張ってね!」
そう声をかけたが、みんなの反応はイマイチピンときてないかんじ。
あぁ、もしかして逆にプレッシャーかけちゃったかな?
なんだか私って役立たずだなぁ、としょげていると、陽人がポンと私の肩を叩いた。
そして、いつもの笑顔を向けてくれた。
「おい、みんな聞いたかっ!? あの恥ずかしがり屋の音羽が応援してくれるって」
……恥ずかしがり屋って、おい。
突っ込みたくなるが、今のところはグッと堪える。
「だからよ、俺たちも音羽が恥ずかしくないように、全力で勝ちに行こうぜ、なっ!」
今度の陽人の言葉には、みんなきちんと顔を上げて大きな声で返事をしたのだった。
その様子にしばらく微笑ましく見とれていると、陽人がいつのまにか私の顔の前にいた。
「近っ!」
この距離で顔を合わせるのは、さすがに恥ずかしい。思わず赤面してしまう。
しかし、陽人はそんなことは全く気にも留めていない様子だった。
一体、なんだって言うの?
「音羽」
陽人がこそっと耳打ちをするかのように囁く。
「ありがとな。頼りにしてるぜ」
え、それだけ?
それを言うためだけに、わざわざ来たの?
相変わらず、掴みにくい奴だ。
「う、うん」
私が曖昧に頷くと同時に、練習開始のアナウンスが入り、陽人たちはフロアへと駆け出した。