16の、ハネ。
みんなは素早くコートに入り、基礎打ちを始める。
陽人の相手は、例のかわいい女の子ーー奈津さんだった。
あとで聞いた話によると、奈津さんは私たちの一個下の学年らしい。
キレの良いショットが、奈津さんのラケットから繰り出される。
それを、陽人は難なく返す。
その繰り返し。
二人の間には、独特な、でもどこか心地良いテンポが紡ぎ出されている。
例えば。
例えばの話だけど、もしあそこで陽人の相手をしているのが私だとしたら、陽人は奈津さんと打つときと同じように笑っているだろうか。
楽しそうにバドをしているだろうか。
陽人が人によって態度を変える奴じゃないのは知ってる。
そもそも、バドをやっているときは、相手が誰だろうと楽しそうに打ち合っているのが陽人だ。
それでも、やっぱり考えてしまう。
私だったら、きっと無理だ、と。
なんでこんなこと考えちゃうのかな?
でも、陽人と奈津さんを見てると、色んなことに目がいく。
胸が疼く。
「ねーちゃん」
背後から、私を呼ぶ声がした。
サークルの代表のおじさんだ。確か、山田さんと言ったか。
「はい」
弱々しく振り返ると、山田さんはニカニカと笑っていた。
「アイツらはそういう間柄じゃねえよ」
「!!」
え、ちょっと、待ってください? 私、あの人たちのこと気になってるなんて一言も言ってないんですけど!?
「それに、俺はいつでもねーちゃんの味方してやるからよ」
だから今日は精一杯応援してくれよ。
そう言った山田さんの言葉は温かくて。
泣く必要なんかないのに、目頭が熱くなってきた。
そうだ、何を気にしてるんだろう。
私は今日応援に来たのだ。
みんなのことを、この声でサポートするんだ。
グズグズしてられない。
大会なんだから。