16の、ハネ。


美香ちゃんと私は、小学5年生のアキト君の応援に向かうことにした。

アキト君は陽人と同じで、片足を失っている。出る種目も陽人と全く同じ。「立位」の「SL3」らしい。

今回の試合は、学年などでは特に別れていないので、陽人とアキト君の2人が直接対決する可能性もあるのだ。

……とは言っても、リーグを勝ち上がり、トーナメントで決勝まで辿り着いたら、の話だが。
そこまで甘くはないことくらいは、小学生ながらもアキト君はわかっているはずだ。

ふと、そんなアキト君を見ると、挙動不審な動きをしている。

ありゃりゃ、緊張しちゃってる。


ちなみに、今は試合前の練習時間。

相手は、中学一年生の子。アキト君よりもずっと背が高く、その存在感は見ているこっちも圧倒されそうだ。

大丈夫かなぁ、と心の中で心配していると、美香ちゃんがツンツンと私の服を引っ張った。

「音羽ちゃん、みぃが『せーの』って言ったら『アキト君ファイトー!』って言ってね」

「うん、わかった。アキト君、緊張しちゃってるから、私たちが応援してあげようね」

「もっちろん!」


そう、私たちが、応援してあげればいい。いつも通りのコンディションなら、勝てるはずだから。


練習が終わり、いよいよ試合が始まる時に美香ちゃんが「じゃあ、言うよ」と応援のスタンバイをした。


「せーの」
「「アキト君、ファイトー!」」


周りにいた人は、何事かとこっちを凝視した。そりゃそうだ、だって会場はまだ静かだったんだから。目立つに決まってる。

でも、構わない。
少しでも、誰かのためになるのなら。誰かの応援ができるのなら。

ただの、陽人の友達だけど。
パラバドミントンなんて全然、できっこないけど。


私は全力で、みんなの後押しをする。


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