16の、ハネ。


周りの目なんて気にしないで、全力で。


ーーそう、思っていた。

できると思っていた。



けれど、私の予想を覆すかのように、周囲の雑音が耳に入ってきた。


「ねぇ、あの子……」

「えー、まさか……あ、でも確かに」


周囲の人が話している内容は、薄々自分でも感じていた。
もしかしたら、こうなる可能性もあると、考えなかった訳じゃない。


でも、今日はみんなの大会だから。
私のために来たんじゃないの。


だから、気にしない。
気にしない、気にしない……。



でも、気にしないようにすればするほど、耳は雑音を一つずつ丁寧に拾ってくる。



「前より表情緩んだ?」

「ね。すごい優しそう」



集中。
応援に集中。集中。集中。



「……ていうか、なんでいるのかな?」

「ね、聞いてみない? 本人かどうか」



聞こえない。
そう、私は何も聞いてない。



「よし、じゃ、私が行こっかなー」



もう限界だった。
背中きら冷や汗が吹き出た。


やめて、と心の中で叫んでいた。


震えが、止まらない。







すると…………。


「大丈夫か?」

そう声をかけて、ポン、と私の肩に手を置いたのは。

「隣座るぞ」

そう言いながら、さりげなく周りの目から私を隠してくれたのは。


「は、はる……と……」


陽人だった。





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