16の、ハネ。
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とは言っても、中々自分から陽人の元に行く勇気は出ない。
気がつけば、もう下校時間になっていた。
「運良く、最寄駅でバッタリ会うってことはないかな……」
なーんて独り言を言ってみたが、今日は陽人は部活があるので私の帰る時間と重なることはない。
陽人の部活が終わるまで待つ、という手もあるが、果たして気持ちが持つだろうか。
「…………帰ろ」
あー、弱い。本当に私は弱い。
弱いんだけど、こればかりは勘弁してほしい。
自分の過去を、それも人には知られたくないような過去を、今まで良い関係を築いてきた人に明かすのは、勇気がいるのだ。少なくとも、私にはかなりの勇気が必要。
それが嫌われたくないからなのか、それとも一度蓋を閉めたことにもう触れたくないからなのかは、微妙なところなのだけど。
私は、頭の中で過去の自分を思い出しながら電車に乗り込む。
過去の私は、おそらく笑ったことがない。
そりゃあ、カメラを向けられたら少しは微笑むし、お笑い番組を観たら笑いが溢れるけれど。
嬉しくてとか、幸せでとか、そういう理由で笑ったことは一度もない。
「はぁ……」
嫌なことを思い出すと、ため息が出てしまう。
それでも最寄駅に着くと、周囲のいつも通りの様子を見て拍子抜けしてしまう。
なんていうか、自分にどんなに嫌なことがあっても結局、他人はいつも通りなんだな、と。
当たり前のことなんだけど。