16の、ハネ。

そう、君のおかげ。

改めて口にすると、やっぱり気恥ずかしさが感じられた。

「ま、ありがとね」

せめてもの照れ隠しで、ツンと澄ましてみせる。

だけど、私のヒーローは「ははーん」と威張るような笑みを見せつけてきた。

「照れてやーんの」

「別に!」

と答えてから、私の質問の答えをまだ教えてもらってないことに気がついた。

「ていうか、結局どこいくのさ?」

「あれ、まだ言ってなかったっけ? 神奈川県唯一の村で、俺のこきょ……」

「だからその唯一の村の名前を聞いてるんだっつーの」

私がすかさずツッコミを入れると、陽人はケタケタと笑った。
……今思ったんだけど、こいつの笑いのバリエーションって一体いくつあるんだろう。


「清川村。聞いたことくらいあんだろ」

そう言われて、私は「あっ」と声を漏らしながら思い出した。

そういえば、小学生のときにキャンプで行ったことがある。

とにかく、絵に描いたような「ザ・田舎!」って感じだったけど、風が気持ちよくて清々しかった。それから、緑が美味しくて、土とか雨とかの匂いが心を安らげてくれた。



そっか。
君は、あの風景の中の、どこか一つに溶け込んでいるんだ。


「……良いところ?」

信号が赤で止まっている間に、そっと問いかけてみる。

「そりゃ、すごく」

陽人は短く答えただけだったが、その少ない文字の中には、心から良いと思っているのが伝わってきた。



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