16の、ハネ。
*
結局、気まずくなっていたのは私一人だけで、陽人自体は何も気にしていないようだった。
……こいつ、鈍いもんなぁ。
でも、こんな鈍いやつでも、ずっと想いを寄せ続けている子がいたりするのだ。
しかも、よりによって可愛い子。
あれ、でも奈津さんではないって、サークルのおじさん……山田さんが教えてくれたよね?
でも、いずれにしろ、陽人には思い人がいることには変わりない。
私の恋は、既に枯れてしまったもの。
だって、陽人はその子のことをずっとずっと追いかけているから。
自分で考えているだけなのに、そこで思わずため息が出てしまう。
でも、同時に諦めもついている。
私は、陽人に元気をあげられるような子にはなれっこない。
……って。
なーんて、私が想いを馳せていると陽人が「おーい」と私に話しかけてきた。
……だから、一瞬体制崩しかけるくらいなら、一々こっち見なくていいっつーの。
「もうすぐ着くぞ! その坂登ればすぐだ」
そう言われて、陽人が指した方を見ると……。
「……え、断崖絶壁?」
と、口に出さずにはいられないほど、目の前には長くて斜面のきつい坂が立ちはだかっていたのだ。
「ンなことねーよ。ちゃんと登れるぜ! 二人乗りは初めてだからわかんねぇけど」
またも陽人はケタケタと笑った。
いやいや、こっちとしては死活問題なんですけどっ!
「こ、怖いから、私ここで降りる!」
私は素早く自転車から降りようとする。
「チキン野郎め!」
「アンタに言われたかないわっ!」
「てか今動くなよ! あぶねーから!」
「おーろーしーてーくーだーさーいー!」
私がいつかのの陽人みたく、大声で駄々をこねると、陽人は小さく舌打ちをした。
「ったくしょーがねーなぁ!」
陽人が自転車のブレーキを踏む。
「ほら、降りてこのチャリ押してくれ」
「っるさいなー、わかってるよ!」
そう言いながら、私は陽人の自転車の背中をそっと押してあげた。
自転車はどんどん進んでいった。
まるで、私たちの意思など関係ないかのように。
私が止めようと思ったところで、止まらない時の流れのように……。
結局、気まずくなっていたのは私一人だけで、陽人自体は何も気にしていないようだった。
……こいつ、鈍いもんなぁ。
でも、こんな鈍いやつでも、ずっと想いを寄せ続けている子がいたりするのだ。
しかも、よりによって可愛い子。
あれ、でも奈津さんではないって、サークルのおじさん……山田さんが教えてくれたよね?
でも、いずれにしろ、陽人には思い人がいることには変わりない。
私の恋は、既に枯れてしまったもの。
だって、陽人はその子のことをずっとずっと追いかけているから。
自分で考えているだけなのに、そこで思わずため息が出てしまう。
でも、同時に諦めもついている。
私は、陽人に元気をあげられるような子にはなれっこない。
……って。
なーんて、私が想いを馳せていると陽人が「おーい」と私に話しかけてきた。
……だから、一瞬体制崩しかけるくらいなら、一々こっち見なくていいっつーの。
「もうすぐ着くぞ! その坂登ればすぐだ」
そう言われて、陽人が指した方を見ると……。
「……え、断崖絶壁?」
と、口に出さずにはいられないほど、目の前には長くて斜面のきつい坂が立ちはだかっていたのだ。
「ンなことねーよ。ちゃんと登れるぜ! 二人乗りは初めてだからわかんねぇけど」
またも陽人はケタケタと笑った。
いやいや、こっちとしては死活問題なんですけどっ!
「こ、怖いから、私ここで降りる!」
私は素早く自転車から降りようとする。
「チキン野郎め!」
「アンタに言われたかないわっ!」
「てか今動くなよ! あぶねーから!」
「おーろーしーてーくーだーさーいー!」
私がいつかのの陽人みたく、大声で駄々をこねると、陽人は小さく舌打ちをした。
「ったくしょーがねーなぁ!」
陽人が自転車のブレーキを踏む。
「ほら、降りてこのチャリ押してくれ」
「っるさいなー、わかってるよ!」
そう言いながら、私は陽人の自転車の背中をそっと押してあげた。
自転車はどんどん進んでいった。
まるで、私たちの意思など関係ないかのように。
私が止めようと思ったところで、止まらない時の流れのように……。