16の、ハネ。

「わっ」
目の前に広がっていた景色に、おもわず感嘆の声を漏らしてしまった。

「すごい、街が一望できる!」

「な、いいとこだろ」

隣で陽人がニカッと笑った。

「……うん、いいとこ」


そこで、しばらくの沈黙。



……わかってる。
そろそろ本題に入らなくてはいけないことを。


「陽人」

私はぐ、と強くブランコのチェーンを握る。

「私の過去のこと、知ってたんだよね」

「ああ」

ズキリ、と心の奥が痛んだ。
それでも、私は続ける。

「……いつから? もしかして、知ってて雪を投げつけてきた?」

「違う」

陽人がはっきりと断言した。
そこで私は少し安心できた。

「お前の存在は、昔から知ってたけど、あのときは全くわからなかった」

「でも、あのとき『お前、もしかして』って呟いてたよね?」

「フォーム」

「え?」

陽人はブランコから立ち上がった。

「雪を投げたときのフォームが、音羽の打ち方のフォームそっくりだったんだ」

陽人は実演してみせた。

「ここの、肘と手首の動き。普通の人は、こう……クイッて曲がる。けど、音羽の場合は曲がるというよりかは……」

「弾いてたんだね」

私が続きを言うと、陽人は一瞬驚いた顔をして、「さすがだな」と感心した。私も、もう何も隠す必要はないから「まあね」とおどけてみせる。

「あとは、ネクタイの色が同じ学年色の青色だったから、友達に聞いたりして調べた」

「……ストーカーじゃん」

「だって、そうでもしないとお前、どこかに消えちまいそうだったから」



消える。

それは、私がバドミントン界から姿を消したのと同じような感じだろうか。

それとも、また違った何かなのか。



「話すよ」


私は、案外あっさりと決心できた。


「私の過去。バドミントンを始めたときのことから、姿を消した経緯まで。全部……」




「陽人になら、話してもいい」













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