小悪魔カレシの甘い罰
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初対面から無茶苦茶な男だとは思っていたが。
ここまで強引で、無作法だったとは。
「あの……っ」
表情ひとつ変えず、司は美桜の腕を引く。
その強気な態度に抵抗できなくなる。
あの夜、腕を引かれて、現実に戻されたように。
「…ちょっと!」
大きめの声を発し、全身でブレーキを掛けると、司はようやく立ち止まった。
人気のないエレベーター前。
振り向いた司は、そのまま美桜の顔を覗き込む。
「……」
「な…何なんですか、いきなり」
端正な顔立ちが近づくと、緊張で身を引いた。
あの夜のシチュエーションに似ていて、心臓が変なふうに跳ねる。
まさか…また。
自分でも浅はかだと思うような予想をしたところで、司がようやく口を開いた。
「どっかで、会った?」
「え…」
司は真顔で聞いてくる。
その眼差しが真剣だった。
故に、彼が自分のことなどさっぱり覚えていないことを認識する。