小悪魔カレシの甘い罰
失恋とキスと美青年
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エスカレーターから、しんと静まり返るホームに吐き出される。
その瞬間に、涙があふれた。
それまでの喧騒と切れ放された途端、そこまで保っていた理性がぷつんと切れてしまったらしい。
今夜、失恋をした。
この恋が終わりに向かっていることは、うすうす感じていた。
彼の魔が差したといっても、2年という月日が2人の間に築いたものに比べたら笑い飛ばして許せるはずだった
──それが本気でないならば。
「別れてくれないか。好きな子ができた」
最後に放たれた言葉は淡々としていた。
まるで別れの手続きに必要な台詞のように温度がなかった。
そう言った彼が、少し見ないうちに別人に思えて来て、その後ろで影響を与える誰かを想像して、また涙があふれる。