小悪魔カレシの甘い罰
BGMがわずかに流れるオフィスで、キーボードを叩く音が響いている。
オフィスの隅では、雑談がてら打ち合わせをしているスタッフがあり、またその横のフリースペースで横になっている者もいた。
噂には聞いていたが、ここは相当自由な社風らしい。
クリエイティブを生業としているせいか、自由な発想でアイデアを出すことが重要とされているのだろう。
一応、就業時間はあるものの、のんびり出社してきては徹夜に明け暮れるスタッフも少なくない。
先輩曰く、ベストなものを期限までに仕上げることが出来るならば、自分にとって一番パフォーマンス性が上がる時間帯に仕事をするべきだという。
どこで、どんなふうに、その日のタスクに取り掛かるかはスタッフ個人の自由らしかった。
ここが落ち着くからと、廊下の床に寝そべってプログラミングをしている変わり者につまづいてしまった時は、さすがに驚いたが。
研修が始まった3日目。
美桜と同期たちは、地方のショッピングセンターのサイト不具合処理など、比較的簡単な案件から任されていた。
「なぁ、長浜。お前どの先輩とチーム組むんだ?」
パソコンの画面から目を離さずに、隣のデスクの同期が尋ねてくる。
彼は理工学部卒で、ロボット工学に長けているらしく、映像よりは物理系に興味があると言っていた。
「まだわからないな…」
だいたいチームを組むといっても、それは自分から立候補するべきなのか、それとも選出されるものなのかがわからない。