小悪魔カレシの甘い罰


 司がどの新人を選ぶのだろう、というのは同期の間で今もちきりの話題らしい。
 
 美桜にとっても、気にならないわけではないが、それは偶然に選ばれたくない気持ちから来るものだった。
 

 あんな強引な性格で、新人にどう接するのだろうと美桜は思う。

 
 司の顔が浮かび、引き金となって、数日前の接近戦を思い出した。

 気が緩むと、あのときの司の雰囲気に、飲まれそうになる。


 思い出したくないのに、浮かんできては、そのたびに鼓動が乱れた。

 そして慌ててそれを頭からかき消し、関係ない、と首を振り業務に戻ろうとした時だった。



「あーこれ司のチェックが要るのに」

「やめとけ、まだ11時半だぞ。お前なんで昨夜のうちにアップしとかないんだよ」

 先輩スタッフが2人腕時計を見やり、がくりと肩を落としていた。

 ノートパソコンを持ったまま、どうしようと考えあぐねている。


「どうかしたんですか? 何かお手伝いしましょうか」

 目の前で困惑している2人に声を掛けると、「時間を進めてくれ」と返された。

「はい?」

 思わぬ答えに首を傾げると。


「いや、今日の午後イチ納品のものがあるんだけど、最終チェックは司だからさ」

「行かないんですか?」


 司のオフィスは皆とは別室で─そのあたりから彼のポジションの特別感が感じられる──ガラス張りになった部屋には、薄いロールブラインドが下がっていたが、シルエットから司がいることは窺えた。


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