小悪魔カレシの甘い罰


 もしかして、仕事中はとんでもない暴君なのかと慄く。


「あの…参考までに知っておきたいんですけど、司さんて普段どんな人なんですか」

 すると通りがかった先輩たちがさらに数名集まって、口々に言った。

「んー天才で変人?」

「小悪魔」

「ひとことで言うと、どS。それに尽きる」

「あと、年上キラーだな」

 聞こえて来た異名は、どれもただならぬ響きだった。


「でも、すごい奴なのは間違いないよ」

 それに対しては皆深く頷いて同意した。

「司さんのプログラム能力の高さに伊崎さんが惚れこんで、前の会社から引き抜いて連れて来たくらいだから」

「まあ、表面だけ見てるとめちゃくちゃな人格してるけど、どうすごいかは…多分すぐにわかるよ」

 先輩たちの言葉に美桜はさっと頷く。

 ここは自分の目で確かめないと、きっとわからない部分なのだろう。


「わかりました。『小悪魔でどSの天才プログラマー』ですね」

「メモしなくていいから、そこ」

 真面目か、と笑いが起きた時だった。


 司の部屋のドアが開く音がして、スタッフは一瞬にしんと静まり返った。

 時計を見ると、ちょうど正午。

 もしかして不機嫌タイムは終わったのだろうかと、出てくる司を見つめていると。


「あ…」

 ドアを開けて支える司の脇を、綺麗な女性が通り過ぎる。

 すらりとした美女で、モデルかと思った。

 司が童顔なせいもあるが、見た感じは彼よりも年上だ。


 2人楽しげに笑いながら出てくる様子は、ビジネスの話をしていた雰囲気ではないことはわかった。

 ここがオフィスでなかったら、間違いなくただのデートに見えるだろう。


 さっき聞いた「年上キラー」の名が頭によぎった。


 まさか、連れ込んでたの?



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