小悪魔カレシの甘い罰


「司さん、もしかしてその彼女さんのこと嫌いなんですか?」

「は?」

「それか、伊崎さんを取られて、やきもち妬いてるとか」


「あんた──」

「はい?」

「馬鹿なのか」


 そう言われて、はっとした。

 初めて司に出会ったときも、彼はそう言っていたからだ。


 同じセリフを吐かれて、美桜は動揺する。

 毒舌で人を嘲りながらも関わってくる態度は、まさにあの夜のままだった。


「ば…馬鹿って」

「よくそんな鈍い思考でウチに入れたね」

「な…な…」


 言いたい放題に言われ、美桜の顔は言葉に詰まって真っ赤になる。
 

 そんな美桜と司のやりとりを見ていた周囲が、少しざわつき始めた。
 
 ただでさえ目立つ司が新人にちょっかいをかけているとなると、すぐに噂になりかねない。


「と…新人いじりもほどほどにしとこ」

 周りの空気を悟った司は、すっと立ち上がって言った。


 人一倍聡くて、毒舌。
 
 噂にたがわぬ相手だと美桜は半分感心してしまう。


 じゃあね、と司はあっさりと会話を切って去ろうとした。



「あ、司さん、わかりました」

「は?」

 立ち去ろうとする司を呼び止めた美桜が、ひとつの結論に達したと手をあげた。



「司さん、その彼女さんのこと、好きだったんですね」

 だから気に食わないという話し方をするのだと、美桜は納得して告げた。


「……」


 司は猫みたいな目を丸くして美桜を凝視する。


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