小悪魔カレシの甘い罰
「はは、それもそうだ」と、笑いながら伊崎がやって来た。
「誰よりもコードオタクな奴に言われたくないよな」
「伊崎さん、それ言わないで」
司は膨れるようにキャンディーを再び口に頬張る。
伊崎は、司の様子にクスクスと零し、
「へぇ、コードエラーを瞬時に気付いたのか、なんか初期の司みたいだな」
伊崎は美桜を見つめると、感心したように言った。
「俺はこんなミスしませんよ」
司は子供のように言い、そっぽを向いた。
ころころと変わる表情に、また美桜は惹きつけられる。
意識しないようにと俯いた。
なぜこの人を前にすると、こんなに落ち着かない気分になるのか。
「けど、気に入った」
「え?」
突然の言葉に顔を上げる。
司はそんな美桜をじっと見つめた。
獲物を捕らえる動物的な目で見られ、美桜の感情が揺れ動く。
周囲も、司の言葉にしんと静まり返った。
「伊崎さん、俺、これと組む」
「ああ、新人とのチームか」
これって…自分のことかと理解するまで数秒かかった。
「いいんじゃないか」
伊崎は、司の報告を受けて頷いた。
そしてオフィス内にざわめきが起きる。
それも仕方ないことだった。
誰もが憧れる天才プログラマーが選んだのは、一見何も持たない女子だとは。