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なのに。

「透哉のばかー!!」


イチカの声が教室に響いた所為で周りの奴らの視線が向く。

その所為で思わず眉間に皺が寄った。


「でけー声、出すなって」

「あたしはそんな馬鹿じゃない!!」

「は?」

「あたしはそんな馬鹿な女達とは違うから身を引いてやるよ!!透哉なんてもう卒業だよ!もうオサムだけにしてやんだから!!」

「はい?」


大声を上げてフンっと顔を背け、教室を出て行くイチカが余計に訳わかんなくなっていた。

つか俺じゃなくても結局は誰でもいいんじゃねーかよ…

それよりも小百合の情報を聞いた所為で、またため息が出てしまった。



「…透哉君、ごめんね。遅くなっちゃった」


放課後、昇降口で待つ俺に芹奈先輩が申し訳なさそうに近づいた。


「なんかあった?」


芹奈先輩の手にはプリントがあり、それに俺は視線を落とす。


「予習のプリントだって。ないと思ってたけど、やっぱあった」


苦笑いする芹奈先輩はプリントをヒラヒラとさせた。


「マジか。じゃ今日も勉強する?」

「勉強するって、透哉君、結局は何もしないじゃん」

「だって面倒くせーし。でもこの前、俺のしてくれたから手伝う」

「え、3年だよ?透哉くん、わかるの?」

「いや、見てみねーとわかんねぇ」

「それよか、あたしが書いたの大丈夫だった?」

「あー…なんとか」

「へー…凄いね。透哉君っぽい字にしたからね」

「なんだそれ。お陰で助かったけど。それよか今日、何もなかった?」

「うん。何もなかったよ」

「そう。なら良かった」


薄っすら笑った先輩に内心、物凄く心配していた。

今日、学校で一回も会ってないからこそ、気になって仕方がなかった。

だけど思ったよりも明るい芹奈先輩に安堵なため息が漏れた。
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