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「ねぇ、ワンちゃん見に行かない?」
「あー…おっさんの?」
「そう。最近全然見に行ってないから元気かなって、」
「そう言えば俺も全く行ってねーわ。アイツ変なもん食わされてねーかな」
苦笑いで口を開く俺に、「ほんとだよ」と芹奈先輩が笑みを作る。
「ちょっくら見に行くか」
「うん。けどなんか雲行き怪しよね…」
見上げる空は黒いどんよりとした雲が辺り一面を覆いつくす。
今にでも降りそうな雨に、眉を寄せた。
「芹奈先輩、傘持ってんの?」
「ううん。透哉君は?」
「え?持ってねーし。とりあえず急ごうぜ」
「うん」
いつもよりペースをあげて歩く。
確か予報では明日の明け方からと言っていた。
全然外れてんじゃねーかよ。
駅周辺の裏手通りにある車庫にたどり着いた時、空を見上げる様におっさんの犬が目に入った。
「お前、元気だったか」
声を掛けながら近づく俺に嬉しそうに尻尾を振る。
いや、俺じゃなく芹奈先輩にだった。
「久しぶりだねー」
なんて言いながら頭を撫でる犬に芹奈先輩は蔓延の笑みをつくる。
その芹奈先輩に「ワンっ、」と吠える犬も嬉しそうに懐いていた。
「おい、お前。俺も居んだぞ」
背中を数回撫でる俺どころか何故かコイツは芹奈先輩に懐き尻尾を懸命に振る。