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‘*。step6
ただ雨音だけが響くこの空間は物凄く居心地が悪かった。
降りしきる雨が自棄に邪魔で、不意に吐き出してしまったため息さえも雨音で消えていく。
ただ、俺は帰ろうとしていた芹奈先輩を離す事は出来なかった。
「タオル取って来るわ。先行ってて」
「うん…」
脱衣所の前でそう言って、俺はタオルを取り出す。
そしてすぐに向かおうとしたけど、思ったより自棄に濡れているシャツを脱ぎ捨て首からタオルをかけた。
「はい」
「ありがとう」
受け取ったタオルで先輩は髪と制服を拭き始める。
その光景を見ながら俺は隣に腰を下ろした。
「隠す事なんて何もねぇから言うけど、さっき居た奴は前の女。もう一度やり直そうって言われて断った」
「……」
「先輩が今まで付き合った奴の事なんか知んねぇけど、ただ言えるのは俺はそいつらと違う。俺は芹奈先輩を飾りだとは思ってない」
「……」
「不満抱えてる事あれば言えば?隠すことなく俺はそれに答えるから」
芹奈先輩の長い髪を拭く手がピタリと止まる。
何かを考えているのか芹奈先輩はジッと俯いたままだった。
しばらくして先輩の吐く息が密かに聞こえ、その口はゆっくりと開いた。