Next to…

「透哉くん。じゃなくて透哉」

「え、」

「ほら言ってみ?」

「もー、なに?」

「早く」

「…とう、や」

「もう一回」

「透哉、好き」

「俺も芹奈が好き」


再び合わせる唇から吐息が漏れる。

何度も重ね合わし、キスにただ溺れている瞬間、不意に鳴った着信音でピタリと唇が離れた。


「ごめん、あたしだ」


俺の身体から手を振りほどき、下に置いてあった鞄の中から芹奈はスマホを取り出す。


「誰?」


ジッと見つめる芹奈に俺は声を掛けると、何故か苦笑いをする。


「萌だ」

「萌ちゃん?出れば?」


コクリと頷いた芹奈はスマホを耳に当てた。


「萌?どうしたの?」

「芹奈ちゃーん!今、何してるの?」

「え、いま?」


漏れて来る萌ちゃんの声に何故か芹奈は焦りだす。

その表情が面白く感じた俺は芹奈に近づいて、首筋に唇を滑らせた。


「え、ちょっ、」


思わず声を出し身を引いた芹奈にクスクス笑う。


「どうしたの?芹奈ちゃん…」

「え、ううん。で、萌どうしたの?」

「あのね。晴馬君がね、萌の家から帰んないの。だからね芹奈ちゃん、来て」

「え、ごめん萌。ちょっと無理」

「なんで?芹奈ちゃん何処にいるの?」


「おーい、萌!!お前、芹奈にいちいち電話すんなよ」

「じゃ、麻友ちゃんにする」

「はぁ?麻友がお前の話聞く訳ねーだろ!」

「だって、晴馬君帰んないじゃんか!!」

「芹奈に掛けても芹奈はお取込み中だってよ、」

「え、お取込み中って何?」

「はぁ?んなもんもお前分かんねーのかよ。透哉とセックスに決まってんだろ」

「え。そ、そうなの芹奈ちゃん…」


萌ちゃんも天然なんだろうか。

直球に聞いて来る萌ちゃんに芹奈が困ったように笑う。






< 132 / 148 >

この作品をシェア

pagetop