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「――…ちょっ、ちょっとダメだって、晴馬君押さないでよっ、」
「声だすなって、」
「だって晴馬くんがっ――…ギャッ、」
その声とともにドサっと音が聞こえ、態勢を崩した萌ちゃんの背中に晴馬先輩が乗っかる。
苦笑いで笑う萌ちゃんとは対照的に違う笑みを漏らす晴馬先輩に思わず舌打ちした。
抱きしめてた身体をどちらともなく離して、
「…萌、なにしてんの?」
芹奈が不快な声を出す。
「あ、うんっと、そのね…これは…」
「だから行くなっつったのに、萌が行こうって言いだすから」
地面に手をついた手を払いながら身体を晴馬先輩は起こすと、萌ちゃんも起き上がりながら更に苦笑いを始める。
「萌、覗き見?」
芹奈が眉を潜めた。
「ち、違う。晴馬君が…」
「俺じゃねーだろ。萌が行こうって言いだしたんだろうが!!俺の所為にすんな」
「その割にお前も楽しがってんのな」
面白そうにニコニコ笑う晴馬先輩にため息を吐きだす。
いつから見てた?とまでは聞けず、髪を乱暴にかき乱した。
「せ、芹奈ちゃんごめんね…」
「まーまー今から4人でどっか行く?」
「は?行かねーよ」
グッと芹奈の手を掴んでその場から離れて行く。
「芹奈ちゃんも透哉くんも怒ってるかも」
「んな事で怒っかよ。つかなんでお前が照れてんだよ、」
なんて聞こえてくる2人の会話を背に、俺は芹奈の手を引いたまま抜け出した。