Next to…

「おい成瀬。プリント出来たか?」


教室に入ろうとする寸前、運悪くその声で足止めをくらってしまった。


「まだ」

「お前、まだって今日提出だぞ」

「わーってる」

「今日HRまでに出さなかったら放課後職員室でしろ」

「ぜってーヤダ」

「だったら早くしろ」

「へーい」


うっせーな。なんて心の中で呟きながら自分の席に着く。

机の中からと昨日から鞄の中に入れっぱなしのプリントを取り出し、思わずため息が漏れる。

授業中、プリントをやるも案の定バレて文句は言われ、結局は昼休みまで持ち込んでしまった。


ザワザワとうるさい教室の雑音が目障りで、だからと行って図書館に行く気も起こらない。


あと残ってる数枚のプリントを手に持ち、俺は屋上へと上がった。

鉄の重い扉を開けた瞬間、生暖かい風が頬に当たる。


暑さは不愉快だけど、人ひとりも居ないこの空間が居心地よかった。

物置の小屋を日陰に、俺はそこにあるベンチに腰を下ろし、プリントにペンを走らせた。


どれくらい時間が経ったのかも分からない。

飯も食わずにプリントに没頭する自分に馬鹿らしくなる。


時間が経つごとに暑さが増し、肌が汗ばんでくる。


「あーっ!!暑っ、」


シャツをパタパタして空気を入れるも、暑い風だからこそ意味がない。

苛々した熱気と空気に、俺は着ていたシャツを脱ぎ捨てた。


脱いだことによって、先ほどよりも涼しさを増す。

そして俺はもう一度、ペンを走らせた。

< 31 / 148 >

この作品をシェア

pagetop