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「んー…なんだろ。透哉君ってさ、学校帰り何処で何食べてんの?」
「あー…俺ね。…ラーメンとか、」
「あっ!!吉兵衛だ」
「え、知ってんの?」
「晴馬がよく行ってるでしょ?あたしは行った事ないけど。じゃ、そこ行こう」
パァっと表情を明るくした芹奈先輩に一瞬、顔を顰めてしまった。
よりによって吉兵衛に行きたいなんて、アンタに似合ってねぇじゃん。
「つーか、あんな所でいいのかよ。もっとほらパスタとかさ」
「ううん。行ってみたい」
「まじで言ってんの?」
「うん」
「まぁ先輩が良かったら俺はいいけど」
「じゃ、そこで」
あそこに行くことが何が楽しいのか俺には分からない。
吉兵衛のおっさんには悪いけど、対して綺麗でもない店だ。
男がいっぱい集まるような場所だし。
こんな事なら、もっとちゃんと考えとくべきだったな。なんて思いながら店の中に入り余計にガッカリした。
「なぁ、もう一度聞くけど、こんな店でいいのかよ」
カウンター越しに隣同士で座って芹奈先輩に口を開くと、「うん」と何故か笑みで返してくれる。
「おい、透哉。こんな店で悪かったな。しかも可愛い姉ちゃん連れて来て、それはねぇだろ」
店を切り盛りしているおっさんの声が真ん前から飛び出す。
おっさんは顔を顰めたと思ったら、芹奈先輩に視線を向けて「どうぞ、どうぞ」なんてこれ以上にない笑みを見せながら水を出す。