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「そう、物凄い美人でな。付き合ってて喜んでて結婚すんだろーな、なんて思ってたらその前に付き合ってた女が妊娠したっつーから、別れるしかなかったんだよ。男の責任っつーのがあってな。で、その人が今の嫁」
「つか、おっさんの恋愛話はいいから。てかそんな事言ってっと怒られんぞ」
「もう尻に敷かれて…参ったもんだよ」
「あー…それは大変で。それよか腹減ったからいつもので。先輩は何する?」
隣に視線を向けると、先輩はメニュー表から俺に視線をうつす。
「あ、あたしも同じのでいいよ」
「定番なチャーシューだけど」
「うん、大丈夫だよ」
「おい透哉。定番とか言うなよ。ま定番だけど。そもそもお前はそれしか食わねえだろ」
「もうおっさん、口挟まなくていいから」
「はいはい分かったよ」
やっと準備を始めるおっさんに深いため息が漏れる。
「なんか、ごめん」
水を含みながら芹奈先輩に申し訳なく謝る。
ゆっくりするどころか返って疲れが倍増する。
「全然大丈夫。なんかおもしろい人だね」
「いつもはあんなんじゃねーんだけどな。今日は特別、芹奈先輩が居るから」
「え、そうなの?」
「ほら見ての通り女の人ってあまり来ねーからな。おっさんの知り合いのおばちゃん達しか」
「だけどなんか落ち着くよね、こー言う場所って」
「え、そんな事、芹奈先輩も思うのかよ」
「思うよー。なんか弾けたりオシャレチックより好きだな、あたしは」
「へー…以外」
「言うと思った」
あはは。と笑う芹奈先輩の横顔にホッとする。
未だに頭の中で過る涙目が気になって、だからこそ芹奈先輩の笑った顔にホッとしてしまう。