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「いや、思い出したくもなかった。と思っただけ」
「え、なに?」
「中3ん時にさ、初めてツレと食いに行って食べてる途中でいきなり訳わかんねぇ男が乱入してきて俺の胸倉掴んでさ、調子のんじゃねーよ。とか言われて」
「……」
「俺も誰だよ、こいつ。みたいになってて、分かんねぇからこそ腹が立って、胸倉掴みあいみたいになってさ、店ん中荒れまくり。食器は割れて水は零れるわで…」
「えー…なにそれ。で、誰だったのその人」
「結局分かったのは、俺じゃなく間違えてんだよそいつ。…晴馬先輩と」
「えー、それって本当の話?」
「マジだって。風貌似てたから間違えたって、ありえねーだろ。俺、あんなチャラくねーし」
「あはは。なんかこれこそウケるよ」
「全然ウケねーわ。いや、まじで災難だったわ。訳分かんねーまま殴られっし…」
思い出せば思い出すほど、苛々が込み上げる。
「で、晴馬はなんて?」
「笑ってただけ。だから時々晴馬先輩の事使ってんの」
「そりゃそうなるよね。晴馬、反省度なしっぽいし」
「でも俺の言う事、聞いてくれんの」
「ま、なんだかんだ言ってアイツも優しいからね」
「そーそー、最終的に荒れ果てた店も片付けてくれたし。だから、おっさんとはそっからの付き合い」
「なんか凄いね。ドラマみたい」
あはは。と笑う芹奈先輩は相当面白かったのか、笑いを切らさない。
こんなどーでもいい話で笑えんのなら、俺はそれはそれで良かったと思った。