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「あ、ちょい待って」


丁度差し掛かった所が、あの吉兵衛のおっさんの家で以前はここに店を出してた場所でもある。

今ではその場所が車庫になってて、そこを覗き込んだ瞬間、勢いよく飛びついて来た犬に両手で抱え込んだ。


「お前、元気かー」


俺の返事に答えるかのようにかわいく吠えてジャレて来る。


「わぁー可愛い。ミニチュアのダックスフントだ」


芹奈先輩が隣で腰を下ろすと、長い髪を手で払って後ろに流す。

そして頭と背中を撫で始めた。


「この犬、あのおっさんちの犬」

「えーそうなんだ。可愛い。あたしも犬飼ってんだ」

「マジで?何飼ってんの?」

「チワワだよ」

「おー、先輩らしいね」

「そう?」

「名前は?」

「プリン…あ、今笑ったでしょ?」


俺の頬が緩んだのが分かったのか、先輩は軽く笑いながら言葉を吐き出す。


「いや…てか何でプリン?」

「食べるプリンが好きだから」

「それあれじゃねーかよ、店の名前何しようかなーなんもねぇから吉兵衛でいいやって感じだな」

「えー、なんか違くない?」

「じゃ今度そのプリン見せてよ」

「うん、いいよ」


一つ言えるのであれば、芹奈先輩とまた今度があるんだ。と思った事。

この人、本当にイメージと違うよな。

きっとこの人の事は、この人の近くに居る人にしか分からないんだろうけど。

だから俺は、もう少し知りたい。




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