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「こいつさー、みんなから揉みくちゃにされんだよ、いつも」
「透哉君の友達に?」
「そう可愛いからって、餓死しないようにとか言ってさ、晴馬先輩なんかこの前ラーメン食わせてたからな」
「えーダメでしょ。お腹壊すじゃん」
「マジそれ。その後ちょっと元気なかったし」
「ヤバいよそれ。何してんの、アイツ」
「だから晴馬先輩来たらコイツ怯えてんの」
「そりゃ怯えるわ」
「だよな」
クスクス笑う芹奈先輩はコイツを両手で何度も撫でる。
その透き通った綺麗な顔に、つい視線を止めてしまっていた。
とすると思い出したかのようにスマホを取り出す。
「ねぇ、撮っても大丈夫かな」
「おぅ、みんな撮ってんし。むしろ飼ってるおっさんが何も面倒みてねーしな」
「そうなの?」
「飯も毎日誰か来っから大丈夫だろとか言ってるしよ」
「凄い。愛されわんちゃんだ。いいな、羨ましい」
羨ましいって、何に対してだよ。
アンタも結構みんなから羨ましがれてっけど。なんて言葉は喉に押し込んで、芹奈先輩はコイツをカシャッと撮る。
「絵でも描くの?」
「何で分かったの?」
「なんとなく」
「最近、絵しか興味なくて。描いてるとホント落ち着くの。落ち着くって言うか、それだけに集中できるから」
「……」
そう言えば言ってたっけ。
何かを忘れた時とか一人になりたい時に描くって。
それが俺には何なのか訳んねぇけど、一つ言えるのは、芹奈先輩はまだ前の男の事を引きずってるんだろうと、そう思った。