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「お前ってさ。芹奈先輩の事好きなわけ?」
「そりゃあもう、マドンナっしょ?」
「マドンナねぇ…付き合いてーの?」
「あー…それは思わねぇかな」
「なんで?」
「毎日ドキドキして一緒に居られそうにねぇじゃん?」
「は?」
「で、芹奈先輩と居てドキドキした?」
「なんもねーし」
「やっぱお前はそれがダメなんだな。すぐホイホイ女捨てっから」
「捨ててねーし」
「どっちみちお前が愛想もくそも何もねーからだろ」
「あぁ、そうかよ」
どんな噂が成り立ってるのか知んねぇけど、俺の事でいろいろ言われてんだろうな。なんて思うと申し訳なく思った。
たかが飯食っただけに、こんなに言われるなんて思ってもみなかった。
芹奈先輩を見かけたら今すぐにでも〈ごめん〉と言葉を残したい。
だけど案の定、講堂に入って3年生の列から芹奈先輩を見つけたけど近づく事すら出来なかった。
これ以上、余計な荒波はたてたくない。
ただ、そう思った。
長いどうでもいいような校長話にうんざりしながら、明日から夏休みのおかげて馬鹿みたいに騒いでる噂を耳にいれる事はないと思うと、なんだか気が楽になると感じる。
むしろあの人の人物像を描いた嘘の噂はいったい誰が流してこうなってんだ、とかも思った。