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「こんな所で何してんの?」
言葉を掛けながら俺も芹奈先輩の隣に腰を下ろす。
「なんか会いたくなったんだ。元気かな、と思って」
薄っすら笑みを浮かべる芹奈先輩の表情が俺には物凄い悲しそうに見えた。
そう、あの涙を流してた時の表情と重なる。
白く細い何度も撫ぜる芹奈先輩の手が犬の毛並みを整える。
いつも巻かれてる芹奈先輩の髪はサラサラのストレートで、それが何度も落ち、そして何度も芹奈先輩は耳に掛け直してた。
「…なんかあった?」
そう言いながら俺も犬に手を伸ばし頭を撫でる。
ここで芹奈先輩は何を語ってたんだろうか。
コイツは芹奈先輩の何を聞いたのだろうか。
そんな言葉を思いながら俺は芹奈先輩の言葉を待った。
だけど、「何もないよ」そう言って笑った芹奈先輩の言葉が自棄に重苦しかった。
「そっか。ならいいけど」
「…うん」
「俺、芹奈先輩に謝らねーとって、ずっと思ってた」
「あたしに?」
「俺と一緒に居たから終業式の時、すげぇ噂になってただろ。先輩の耳にも入ってると思うけど」
「あー…うん。そんな事もあったね」
「なに?過去形?」
「それなら気にしてないよ。あれはあれで楽しかった。だからまたこのワンちゃんにも会いたくなったの」
「…ごめん」
「だから何で謝るの?謝らないでよ…じゃなきゃあたし困る」
「……」
「ほらこの子もいつもの透哉君じゃないから困った顔してるよ」
クシャリとコイツの頭を撫でた先輩に、「こいつはもともとこんな顔だし」そう言って、コイツの鼻をツンとした。