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「おー、もしかしてプリン?すげえ可愛い」
リビングに入った瞬間、キャンキャンと駆け寄って来たプリンは俺を見てすぐ吠える。
何度もなくプリンの頭を俺はそっと撫でた。
暫く撫でると、さっきまで吠えてたプリンは落ち着いたのか俺に気を許す。
「わー、凄い。この子、人見知りだから結構鳴くのに」
「え、マジで?」
「晴馬なんてギャン鳴きだよ。未だに…」
「マジで?あの人、おっさんちの犬にも懐いてもらえねーもんな。まじ笑える」
「だよね。晴馬ヤバすぎ」
あはは。と笑う芹奈先輩が、いつもの先輩に戻ったかのように明るくなり思わず安堵のため息をつく。
「ただいまプリン」
そう言ってワシャワシャと撫でる先輩の笑みが途轍もなく俺の心を揺るがす。
「おぉ、すげぇ懐くね」
「いつもこんな感じ。ほぼあたししか家に居ないからさ」
「え?親は?」
「お父さんは単身赴任でいないしお母さんはほぼ夜勤だし、お姉ちゃんは彼と住んでるから、いつもあたしだけ」
「寂しい?」
「初めはそうだったけど今は全然。だってプリンがいるし。ねぇープリン?」
プリンに問いかけるように芹奈先輩は頬を近づける。
「なんかコイツが羨ましいわ」
思わず苦笑いしながら呟く俺に「え?なんで?」なんて芹奈先輩が聞き返してくる。
「いや、なんもねぇし」
「え、なにそれ。あ、なんか飲み物入れるね」
急に思い出したように芹奈先輩は立ち上がってキッチンに入り込む。
そんな芹奈先輩の事が正直、俺には分かんなかった。