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「…何で逃げねぇの?」
唇が触れるか触れないかの距離で俺は口を開く。
「だって透哉君はそんな事しない」
「何を根拠にそんな事言ってんだよ」
「分かるもん」
「は?」
「分かるから。そうじゃなかったらもうあたし襲われてるよ?会った時から」
何を突然言い出したんだと思った時には俺は既に芹奈先輩から身を引いてた。
軽く吐き出したため息はすぐに消え、芹奈先輩は未だに仰向けになって天井をジッと見つめてた。
「…帰るわ」
ため息交じりに呟き俺は家を出る。
これ以上ここに居たらダメだと本気でそう思った。
何を根拠に俺なら大丈夫と言ってんだろうか。
〝そうじゃなかったらもうあたし襲われてるよ?会った時から″
そう言った芹奈先輩の言葉が自棄に引っかかる。
それってどう言う意味なんだろうと。
なのになんで俺に対して平然としてんだよ。
俺も男だっつーの。
何すっか分かんねーのに…