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「それ友達にも言われた。行こうって誘われてたんだけどね」
「でもバイト優先?」
「うん。そうしちゃった」
「楽しい?バイト」
「うーん…普通」
「なんだよ、それ」
クスクス笑う俺に同じように芹奈先輩は笑みを漏らす。
その瞬間、ドンっと上がった花火がビルとビルの隙間から見え、芹奈先輩が空を見上げた。
「綺麗だねー…」
「あっちで見る?」
「え?」
「あと30分くらい上がってっし」
「…うん」
ニコっと口角を上げた先輩に「んじゃあ、」と言って学校よりの土手に向かった。
大量に止めてある自転車に埋もれながら原付を止める。
そして人が一番すくない河原の場所に向かって石段に腰を下ろした。
「なんか思ったけど、向こうよりこっちの方がいいな」
「なんで?」
「あっちすげぇ人。むさ苦しかった」
「すごそうだね、あっちは」
さすがに屋台すらないこの場所は人気が物凄く少ない。
近くの人がただ花火を見てるって感じだった。
バンバンと上がっていく花火を芹奈先輩は見つめる。
そしてまたお互いの会話が消えてしまった。
何か話さなきゃいけねーと思いつつ話す会話すら見つかりもしない。
ただ思ってるのは、あの日の事で。