最恐ドクターの手懐けかた
マンションを出てからようやく分かった。
遠藤先生の家は、私なんかのアパートとは違う超高級マンションだということに。
そして、次元が違うということに。
私、なんで遠藤先生なんかに恋しているのだろう。
もっと普通の会社員にしておけば良かった。
だって遠藤先生は、私なんかに見向きもしないから。
好きになった私は、都合のいい女になってしまったから。
私はこれから、どうすればいいのだろう。
遠くで雷の音がした。
梅雨の湿り気を帯びた空気が、私の髪を揺らしていく。
その中を足早に歩きながら……
涙が頰を伝っていた。