最恐ドクターの手懐けかた





嫌な胸騒ぎがする私を見て、さもおかしそうに彼は笑う。

稀に見せるその笑顔に、胸がきゅんと音を立てる。

私はやっぱり、簡単には遠藤先生を忘れられない。





「だから言っただろ。

俺はお前のために弾くって」




そう言って彼は私の頭を撫で……ナースステーションから出て行った。

患者たちが待つ、ホールの方へ。






残された私は、遠藤先生の触れた頭を押さえていた。

顔には血が上り、胸のドキドキは止まらない。

ああいうのを確信犯と言うのだろうか。

こんなことをされちゃ、忘れたくても忘れられないじゃん。



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