最恐ドクターの手懐けかた
「奈々ちゃん、気にしなくていいよ。
遠藤先生のあの罵声は、いつものことでしょ?」
「そうですよー。
あのNSTじゃ、私だって気付きません。
それに赤井さん、母子ともに元気にしていますよー」
すっかり落ち込んでしまった私を、先輩の東さんと後輩の優奈ちゃんが励ましてくれる。
その気遣いは嬉しいが……
遠藤先生の言葉は、酷く私の心を抉った。
私は助産師として医療に携わる者なのに、何てことを考えてしまったのか。
もうすぐで、人の命を奪うところだった。
実際、緊急帝王切開になった赤井さんの赤ちゃんは、へその緒がぐるぐるに巻き、こま結びみたいになっていた。
仮死状態で生まれてきて、新生児科の医師の蘇生によって一命を取り留めたのだ。
大丈夫だろう、その過信が命取りになる。
医療の現場はそういう世界だ。
そんなこと、分かっていたのに……