最恐ドクターの手懐けかた





「女性は、双子の世話に家事にと忙しくしていたが……

妊娠六ヶ月を前に……子供を亡くした」




最後の言葉が震えていた。

そして、軽々しくその話を聞いていた私の胸を、鋭く抉った。





「俺はブチ切れて、悲しみに沈む夫を責めた。

それだけじゃねぇ。

当時の担当医に能無しと叫んだ。

でも……沈んでるのは俺だけじゃねぇ。

立ち直れないほどの心の傷を負った夫婦はもちろん、今まで涙を見せたことのない俺の親父まで泣いていた。

幸いなのは、幼稚園の双子だけが状況を深く飲み込んでいなかったことだ。

それでもそいつら……『赤ちゃん、お星様になっちゃった』なんて言うんだぞ?

……泣きそうな声で言うんだぞ?」


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