世界が色を失ってから
待ち合わせ場所の時計までは、歩いて15分ほど。


ニコニコしながら彼女は歩いていく。


待ち合わせ場所に着いたのは9時20分前、約束の10分前だ。


いつもは彼氏である樹の方が早いがまだ着ていないようだ。


今日は樹と希咲の付き合って五年目の記念デートなのだ。


本当は付き合い始めた11月18日にデートをするはずだったが、希咲の仕事が忙しく休みが取れなかったため、この日になった。



付き合い始めて五年、二人は大きな喧嘩もなく倦怠期もなく、今ではもう熟年夫婦のような雰囲気を持っている。



希咲は時計の下で待っているが待ち合わせ時間になっても樹が来ない。



希咲は時計を何度も確認するが5分過ぎても10分過ぎても、30分過ぎても樹は来ない。



心配になった希咲は樹に電話するが、繋がらない。



心配は膨らんでいくが、待つことしかできず結局、待ち合わせから1時間が経過した。



「寒いなぁ。

樹、大丈夫かな?」



彼女の呟きは白い息と一緒に消えていった。


プルルルル



希咲の携帯に樹の姉、充笑から電話がかかってきた。



「もしもし?」



希咲が出ても電話の主、充笑は一向に話出さない。

それより気になるのは電話の奥から聞こえるすすり泣く声。

ようやく


「希咲ちゃん?」


涙声の充笑。

「はい」


希咲はなぜか嫌な予感がして、声が震えていた。



「あのね、、樹が、事故に遭ったの、今から中央病院に来て。」



「っ分かりました。」



平然と答えたが彼女は内心崩れ落ちそうで、ドクドクと大きくなる胸を押さえながら雪が薄く積もる道路を走らないように急ぎながら病院に向かった。



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