世界が色を失ってから
3
嫌な夢を見た
樹が死んだ時の夢
眠りから覚めた時、体が重くて泣いていた。
外を見ると明るくなっていて、時計を見ると9時を回っていた。
この一年、何度も同じ夢を見た。
夢の中で私は傍観者となって、あの日の自分を見ている
目覚める時はいつも泣いている
「もう、疲れた…。」
そう呟いて、ベッドから出る気になれず、
ぼーっとしていると、部屋のドアが開いた。
「あ、希咲起きた?
朝ごはん作ってるからいっしょに食べよう?」
幸枝がいた
幸枝は中学の頃からの友達で今でもこうやって私を心配してよく家に来てくれる
栄養士になる為に大学に通っていて、料理も上手なので美味しいご飯を作っては食べさせてくれる
「今日はね、ほうれん草のおひたしと卵焼き
とかぼちゃの煮物、冷奴にお味噌汁、シャケ
に玄米ご飯、フルーツヨーグルトだよ!
苺もあるよ〜」
「相変わらず、凄いね…朝からごめんね。」
私の言葉に幸枝は顔を曇らせ
「何言ってんの!私とあんたの仲でしょ。
そんなの気にしなくていいから早く食べましょ!」
そう言うと私をベッドから引っ張り出し席に座らせ、キッチンに戻りバランスの良い朝食を次々にテーブルに運ぶ。
「私お腹空いちゃった!食べよう食べよう!!
それでは、いただきます。」
「いただきます。」
幸枝の作ったご飯はいつもと同じでどれもとても美味しくて箸が進む。
「このかぼちゃ美味しい。」
「そのかぼちゃ、朝からしなくていいように昨日、煮込んでたのよ。
美味しいなら良かった。」
そう言ってニコッと笑う
「幸枝の作ったご飯どれも美味しい。」
「希咲に言われると照れるなぁ〜!
ありがとう。」
彼女は本当に嬉しそうだ
幸枝の作ったご飯はとても美味しい、全部食べてしまいたいくらい美味しい。
でも、私の小さくなった胃は半分以上残していっぱいになった。
「もうお腹いっぱい。
残しちゃってごめんなさい。」
「この間よりいっぱい食べれたじゃない!
良かった〜!
じゃあ、苺持ってくるね!」
お皿に入った苺は真っ赤でみずみずしい
一粒口に入れてみると、甘酸っぱくて美味しい。苺は別腹で二粒三粒と食べていった。
朝食が済むと幸枝は作り置きのご飯を作ると言って台所に、私はすることがなくテレビをつけた。
『12月7日、今日の占いのコーナーです。
まずは11位〜〜』
もう7日か、
あと2日で樹の命日。
命日には一緒にお墓参りに行かないかと進樹さん達に誘われている。
今の私を見て、樹はどう思うだろうか…
仕事も辞め、部屋は散らかり放題、食事もまともに摂らず樹の家族や幸枝に頼りっきり…
樹に会わせる顔がない。